東京大学は、2027年9月に新しい教育課程「UTokyo College of Design(カレッジ・オブ・デザイン)」を開設する予定です。
新しく設置される学部は、「価値創造学部・価値創造学科」です。学士課程と修士課程を一体的に学ぶ、5年制の教育プログラムを特徴としています。
1. 新学部を設置する最大の目的
一言で説明すると、「知識をたくさん持っている人」だけではなく、「世界の問題を発見し、さまざまな知識を組み合わせて、新しい社会をつくれる人」を育てることです。
これまでの大学教育では、法学部なら法律、経済学部なら経済、工学部なら工学というように、専門分野ごとに知識を深めることが中心でした。
しかし、現代社会の問題は、一つの専門分野だけで解決することが難しくなっています。
例えば、少子高齢化問題を解決するには、次のような知識が必要です。
・経済学:労働力不足や社会保障制度を考える
・医学:高齢者の健康や介護を考える
・工学・AI:介護ロボットや新しい技術を開発する
・社会学:家族や地域社会の変化を理解する
・政治学:社会制度や公共政策を考える
新学部では、こうした異なる分野の知識を組み合わせ、実際に社会を変えるための方法を考えます。
つまり、「問題を勉強する大学教育」から、「問題を発見し、解決策を実現する大学教育」へと発展させることが大きな狙いです。
2. 東京大学が目指す5つの目標
① 世界規模の社会問題を解決できる人材を育成する
環境問題、貧困、人口減少、教育格差、AIによる社会変化などに対して、国境や専門分野を越えた解決策を考えられる人を育てます。
② 自分で問題を発見する力を育てる
教員から与えられた課題に答えるだけではなく、「社会にはどのような問題があるのか」「本当に解決すべきことは何か」を学生自身が考えます。
③ 新しい価値を創造する力を身につける
新しい製品を生み出すだけでなく、教育制度、都市の仕組み、公共サービス、企業活動などをより良くする発想と実行力を育てます。
④ 国際社会で活躍できるリーダーを育てる
日本人と外国人が英語で学び、異なる文化や価値観を持つ人々と協力して、世界に通用する解決策をつくる力を養います。
⑤ 東京大学の教育そのものを改革する
専門分野を横断する授業、学生主体の学習、企業や海外機関での実践教育を取り入れ、新しい大学教育のモデルをつくろうとしています。
3. 「デザイン」という名称にはどんな意味があるのか?
一般的にデザインというと、絵を描くこと、建築や商品の形を考えることを想像します。しかし、東京大学が考えるデザインは、それよりもはるかに広い意味です。
具体例として、日本の地方で交通手段が減っている問題
| 従来の発想 | 新学部が重視する発想 |
| バスの運行本数を増やす方法を考える。 | AI、交通工学、地域経済、福祉、行政などを組み合わせ、移動しやすい地域社会の仕組み自体を設計する。 |
つまり、この学部の「デザイン」とは、より良い未来の仕組みを考え、実際の社会に形として生み出すことを意味しています。
東京大学は、単に美しい製品をつくるデザイナーではなく、社会に変化をもたらす「チェンジメーカー」を育てたいと説明しています。
4. 従来の東京大学の学部と何が違うのか?
| 比較項目 | 従来の学部 | 新学部 |
| 学習の中心 | 専門分野の知識を深める | 分野を横断して課題解決に取り組む |
| 学習期間 | 学部4年、修士は通常2年 | 学士・修士を最短5年で修了可能 |
| 授業言語 | 日本語中心(一部英語) | すべて英語 |
| 入学時期 | 主に4月 | 9月 |
| 学習方法 | 講義・演習・研究 | プロジェクト・実践・共同作業を重視 |
| 学外での学習 | 学部や専攻による | 長期インターンシップなどを組み込む |
| 学生の構成 | 日本人学生が中心 | 国内外から多様な学生を募集 |
5. なぜ5年制なのか?
大学4年間と大学院修士2年間を合わせると、一般的には6年間必要です。
新しいプログラムは、学士・修士を一貫して学び、早期修了制度を利用することによって、最短5年間で修了できる設計です。
学士・修士一貫最短5年間(所定の修了条件あり)、重要なのは、単に卒業までの時間を短くすることではありません。
学部と大学院の学びを連続させ、基礎知識、課題発見、研究、実践を一つの教育課程として設計しやすくすることにも意味があります。
6. 留学生にとって注目すべき点
2027年9月開設予定の基本情報 (2026年10月時点)
| 項目 | 内容 |
| 学部・学科名 | 価値創造学部・価値創造学科 |
| 教育課程名称 | UTokyo College of Design |
| 入学時期 | 2027年9月 |
| 募集人数 | 1学年約100名 |
| 授業言語 | 英語のみ |
| 入学者選抜 | 独自の選抜制度 |
| 学習環境 | 初年次は全寮制 |
| 修了 | 学士・修士を最短5年間 |
7. まとめ:東京大学はどんな大学教育を実現したいのか?
東京大学の新学部が目指す人材像を整理すると、次のようになります。
従来の大学教育: 専門知識を身につけ、その知識を社会で活用できる人材を育てる。
新学部が目指す教育: 社会の問題を自分で見つけ、異なる専門分野の知識を組み合わせ、多様な人々と協力し、新しい社会の仕組みを創り出せる人材を育てる。
私の解釈では、この新学部の最も重要な意味は、東京大学が「何を知っているか」に加えて、「その知識を使って、社会にどのような変化を生み出せるか」を教育の中心に据えようとしている点です。
